2019年にnVidiaが3D立体視から撤退して以降、新たに3D立体視でパソコンゲームを楽しむことは困難な状況にありました。(詳細)
そのような状況の中で、これまで精力的にパソコンゲームを3D立体視対応にするModを提供してきた HelixModのサイトで、新たな3Dドライバ geo-11 のβ版が公開されました。
まだβ版のため、導入には若干の手間がかかりますが、このフリーソフトウエアを利用すると、nVidiaのドライバに頼らずに DirectX 11 対応のゲームを立体視対応にすることができます。
詳細は下記の HelixMod のページをご確認ください。
ここでは、geo-11を利用して、パソコンゲームを立体視で楽しむ方法の説明をしたいと思います。
※ geo-11はまだベータ版のフリーソフトです。不具合などが発生する可能性もあるので、利用については自己責任でお願いします。
Meta Quest2 を使って、geo-11 3D driver と SteamVR と Desktop+ を利用してPCゲームを3D立体視で遊ぶ方法を具体的に解説したページを作成しました。興味がある方は下記を参照ください。
パソコンゲームを3D立体視で楽しむには、まず、立体視をするためのハードウエアを準備する必要があります。現時点では主に下記のどれかが利用できると思います。
ただし、条件として、「パソコンの画面を表示できること」と「そのパソコンの画面上でサイドバイサイドの映像を表示したときに、それを立体視で視聴できること」が必要です。
現時点で新たに製品を購入しやすいのは3D対応プロジェクタだと思います。2024年現在では、XGIMI や JMGO などのメーカーが DLP-Link方式 に対応した製品(フルHDで10万円前後)を販売しています。
また、以前は専用の3Dメガネが入手困難な状況にありましたが、2024年に入り、家電量販店で DLP-Link方式に対応した3Dメガネを購入できるようになりました。ビックカメラやヨドバシカメラ、ヤマダデンキなどで、「取り寄せ」にはなりますが、Dangbeiというメーカーの製品が購入可能です。
※現在の自分は JMGO N1 というプロジェクタと、ビックカメラで取り寄せで購入したDangbeiの3Dメガネを利用しています。( JMGO N1 は2023年7月末のアップデートで3Dに対応予定だったのが未定となったため心配したのですが、11月のアップデートで対応になりました。3Dへの切り替えがかなり面倒で、台形補正との併用もできないんですが、サイドバイサイドの3Dゲームを快適に立体視で遊べています)。
ちなみに、エプソン や BenQ や LG などの大手メーカーの、2024年時点での新製品では、一部の高級機のみ3D対応になっていて、純正品の3Dメガネなども販売していないようです。カタログに3Dメガネの純正品が掲載されていても、在庫が切れてから追加での製造をしていないことがあるので注意が必要です。なお、エプソンの3D対応プロジェクタの多くは、DLP-Linkではない方式(赤外線方式など)を採用しているので、上述の3Dメガネは利用できません。エプソンのプロジェクタに適合する新品の3Dメガネを探すのはけっこう大変かもしれません。
長時間の利用には向きませんが、VRゴーグルでもパソコンゲームを立体視で楽しむことが可能です。ただし、Quest2 や Vive などのような、パソコンと接続してデスクトップを表示できるVRゴーグルが必要です。
無料で利用可能なBigScreen Beta や Desktop+ などのアプリケーションを利用すると、サイドバイサイドのパソコンの画面を表示して、それを3D立体視で見ることができます。この機能を利用してゲームを立体視します。ただし、1台のパソコンで、VRと立体視の処理を同時におこなう必要があるため、かなり高性能のパソコンが必要になる点には注意が必要です。
以前、 steamでは、HelixMod をVRゴーグルに対応させた 「HelixVision」というアプリケーションが販売されていました。アーリーアクセスでしたが、残念ながら、現在は販売が停止されているようです。最終的には geo-11 をHelixVisionに統合して、ボタンひとつでゲームを3D立体視化してVRゴーグルで楽しめるようにする計画のようです。
3D対応テレビは、もっとも手軽に立体視でゲームを楽しめる環境です。しかし、残念ながら、2017年にすべての大手メーカーが3D対応テレビの事業から撤退してしまったため、現状では、3D対応テレビの新製品を購入することはできないと思います。
中古で手に入れられる可能性はありますが、修理などでパネルが交換されていて3D立体視が使えなくなっている場合もあるので注意が必要です。
過去の一時期、パソコン用のディスプレイ自体に3D立体視の機能をつけたものが発売されていました。しかし、かなり昔に販売終了になっていて、現在は入手が困難です。
ですが、2022年にAcerが裸眼立体視可能な3D対応ディスプレイを発売するという発表がありました。サイドバイサイドに対応しているようで、日本では2022年夏に発売予定のようです。この文章を書いている時点ではまだ発売前なので、geo-11で利用可能かどうかはわかりませんが、期待したいところですね。 Acerの裸眼立体視の3Dディスプレイは、残念ながら全てのサイドバイサイドの映像を立体視できる汎用のものではなく、専用のアプリケーションを使う必要があるようです。
自分は試したことはないのですが、パソコンの画面を表示でき、サイドバイサイドの立体視にも対応した製品が出ているようです。ただし、この種のほとんどの製品は、頭の動きに映像が追従するため、画面の様々な場所を注視する必要があるゲームのプレイには向かないと言われています。最近のARグラスの中には、空間にディスプレイの位置を固定する機能を持つものもあるようなので、将来的には有力な候補のひとつになるかもしれません。現状では、3D立体視にできるかどうか以前に、自分がこのタイプのディスプレイでゲームを楽しむことができるか、購入前に試して確認をしたほうが良いと思います。
ハードウエアが準備できたら、次に、パソコンの画面上に表示されたサイドバイサイドの画面を、そのハードウエアを使って立体視できるか確認します。
YouTubeなどを探すとサイドバイサイドの3D立体視の動画が見つかるので、それを全画面表示にしたうえでプロジェクタなどで表示し、3D機能を有効にして立体視できるか確認します。
geo-11はDirectX11のゲームをサイドバイサイドで表示するための Mod です。 ですから、パソコンで表示したサイドバイサイドの映像を立体視できる環境さえ準備できれば、ゲームを立体視で遊ぶことができるわけですね。
ただし、ゲームによってはフルスクリーン表示にするとデスクトップとは別画面として扱われてしまい、画面の転送が上手くできない場合があります。この問題は、ゲームの表示方法を「ボーダーレスウインドウ」に変更すると解決することがあります。
geo-11の正しい導入のしかたは、HelixModのページに掲載されています。基本的にはゲームの実行ファイルが保存されているフォルダに、必要なファイルをコピーするだけです。
コピーしたファイルを削除すればアンインストールできます。ただし、同名のファイルが存在していた場合、上書きをしてしまうと元にもどせなくなるので、あらかじめバックアップをとっておくと良いと思います。
導入の手順の要点をまとめると下記のようになります。
以上の作業で geo-11 を導入できます。この作業をしたうえでゲームを起動すると、左右に映像が表示されるサイドバイサイド形式でゲームの画面が表示されます。
それが確認できたら、上述のハードウエアでパソコンの画面を表示し、3D立体視の機能を有効にすることで、ゲームの画面を立体視で表示できます。
なお、geo-11では左側と右側の映像を入れ替える機能はまだ未実装のようなので、サイドバイサイドの左右が逆だった場合には、ハードウエアの機能で入れ替えてください。バージョン6.56で左右入れ替えなどを、設定ファイル(d3dxdm.ini)の書き換えでおこなえるようになりました(3Dの形式はサイドバイサイド、トップアンドボトム、インターレス、チェッカーボードに対応)。
ここでは、現在の環境でパソコンゲームを3D立体視で楽しむ方法について説明をしました。
geo-11はまだβ版ですが、かなり期待ができるプロジェクトなので、今後の発展に期待したいと思います。
いくつかのゲームで動作の確認をしたので、geo11 3D driver用の動作リストを作成しました。下記のリンク先を参照ください。
以下は古い情報です。
いくつかのゲームをgeo-11で3D立体視してみました。まだ数は少ないですし、軽くプレイしただけですが、よかったら参考にしてください。
なお、geo-11で立体視できるのはDirectX11を利用しているゲームのみです。設定ファイルにはDX9についても書かれていますが、現状ではDirectX9の設定については nVidiaのドライバで無効化されている 3D Vision の機能を呼び出して使うだけのようです。
ちなみに、DirectX9を利用しているゲームについては、nVidiaのグラフィックカードをのせたPCで、HelixModが提供している3DFixManagerを使えば、HDMIでの3D立体視出力が可能です。少なくとも、2022年のはじめに提供されたドライバでは、 DirectX9 の立体視機能は無効化されているだけでまだ削除されていません(ただし、 DirectX11 の立体視機能は削除されています)。
このリストは下記の環境でチェックしています。
グラフィックカード:GeForce RTX 2070 CPU:Intel Core i7-9700 OS:64bit版Windows10 3D環境:DLP-Link方式 3Dプロジェクタ
ソフトウエア | メーカ | Version | Mod | 品質 | コメント |
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零の軌跡:改 (Trails from Zero) | 日本ファルコム, NIS Ashia. Inc (steam) | 0.6.56/x64 | なし | ◎ | Sクラフト時の周辺の模様や一部の影などを除き、光の表現などもふくめてかなり綺麗に立体化される。UIやフキダシは立体化されないので、それにあわせて立体感を調節すると良い感じになる。一部の不自然な影は設定の「ダイナミックシャドー」を無効にすれば消せる(通常の影は問題なく立体視可能)。ゲーム中の劇が立体視で見られるのがとても素晴らしい。 |
創の軌跡 | 日本ファルコム, Clouded Leopard Entertainment (steam) | 0.6.56/x64 | なし | △ | 安定して立体視可能。ただし、煙や雲や光などの一部のエフェクトが立体視できない。geo-11のファイルのコピー先は、インストール先フォルダ内の bin/Win64 なので注意。設定ファイル d3dx.ini の ShaderOverride の設定として、ハッシュコード(1559fd24ce053d00, 50d2270ae9b2bb6b, d6cf07000f877df4 )のシェーダーを非表示にする記述を追加すると、表現の効果は減るが違和感が減少する。 |
那由多の軌跡 : 改 | 日本ファルコム, NIS America. Inc (steam) | 0.6.56/x64 | なし | ◎ | 安定して立体視可能。ワールドマップで主人公の位置が立体化されないなど一部に問題はあるが、ゲーム画面などはほぼ問題なく立体視で楽しめる。 |
セインツロウIV | Deep Silver (steam) | 0.6.56/x32,X64 | あり | × |
自分の環境では12月9日のゲーム本体のアップデート以降、geo-11が利用できなくなりました。残念です。 以下は以前のコメント:HelixModで提供されているゲーム専用MODを導入後、x32のファイルを導入して確認(64bit版Windowsを使用していても、ゲームが32bit版のためx32のファイルを導入する必要があるので注意)。起動時にエラーメッセージが赤字で表示されるが、問題なく立体視できているように思う。 |
ウィッチャー3 (Ver. 1.33以前) | CD PROJEKT RED (steam) | 0.6.10/x64 | あり | ◎ | ※以下は2022/12/14のアップデートより前のバージョンで試した結果です。 HelixModで提供されているゲーム専用MODを導入後、x64のファイルを導入して確認。HelixModでも動作確認リストに掲載されているとおり、問題なく完全な立体視が可能。 |
一部のシェーダーを無効にして非表示にするには、d3dx.iniのファイル内に下記のような記述を追記します。下記の例ではハッシュコード「1559fd24ce053d00」のシェーダーを無効にします。「_Water」の部分は、他と重ならないものであればどんな名前にしてもかまいません( _Shadow 、 _Light など、後で見たときに何のシェーダーかわかるような文字列にしておくと良い)。
[ShaderOverride_Water] Hash=1559fd24ce053d00 Handling=skip