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シミュレーションRPGに関連しそうな昔のパソコンゲーム

はじめに

今までいろいろ書いてきた電ファミの連載「ゲーム語りの基礎教養」に、SRPGをあつかった下記の記事が掲載されました。

この記事で「ファイアーエムブレム」の特徴として書かれている要素には、「ファーストクイーン」(1988)に含まれている要素が多くあります。情報を拡散する際には間違いを広めてしまわないように注意していただければと思います。

※なお、他にも気になる点はありますが、この記事の途中には「などというつもりはない。」と書かれています。この行より前のどこから否定してるかはわかりませんが、前半のどこかの場所からこの行までは著者の意見ではないのでしょう。そのため、この記事についての指摘は後半のファイアーエンブレムの話だけにとどめました。

※ちなみにこの記事のAVGに関する記述もかなりひどいです。「弟切草」の発売はわかりやすいAVGなんていくらでもあった1992年です。前半に書かれてるので、これも「などというつもりはない」のかもしれません。

ここでは、シミュレーションゲームとロールプレイングゲームを組み合わせる試みに関連しそうな、昔のパソコンゲームを紹介したいと思います。ファンタジーの世界観の導入や、ストーリー・シナリオを重視する試み、ロールプレイングゲーム側がタクティカルな要素を導入した例、キャラクタ性やリアルタイム要素や成長要素の導入など、関連は薄いものの間接的に関わりのありそうなものも含めています。自分は純粋なシミュレーションゲームはあまり得意ではなく、くわしい知識があるわけでもないので、大戦略や信長の野望などの有名/典型的なシミュレーションゲームは除いています。また、海外のゲームも詳しく知らないので国産PCに移植されたもののみ扱っています。そこはご理解いただければと思います。

1982~1983年

アリババ(Ali Baba and the Forty Thieves,Stuart Smith, 1982)
成長要素はないものの、シミュレーションゲーム的なターン性の移動システムを使って、RPG的な2Dフィールドを探索する形態のゲーム。主人公や仲間や敵はそれぞれ移動できる距離が決まっていて、順番に行動ターンがまわってくる形になっている。仲間をいつでも出現させたり消したり復活させたりでき、多数の仲間を出現させると操作感はかなりウォーシミュレーションっぽくなる。敵はそれぞれに固有の行動パターンを持っていて、敵同士が戦闘しあう場合もある。ドラゴンとネズミ人間が戦っているわきをすり抜けて先へ進めたりもする。目的は姫を救出することで、敵を倒さずたった一人で救い出すと高評価になるマルチエンディングを採用している。国産PCにもスタークラフト社によって「アリババ」(1985.2)という名前で移植されている。
ロードオーバー(アスキー,1982)
ファンタジーを舞台にしたかなり初期のシミュレーションゲーム。システム的には陣取りゲームで、光栄の「信長の野望」や「ロイヤルブラッド」をシンプルにしたようなものになっている。複数の領土に分かれたマップ上のひとつの城の主になり、兵士をやとって近隣の領土に攻め入っていく。その領土にいる敵の人数と、攻め込む味方の人数と、若干の乱数要素によって勝敗が決まる。勝利すると自分の領地にすることができ、敵の城の領地を占領することが目的になっている。
オールキャストスタートレック(1982)
初期に流行したスタートレックゲームのアレンジ版。プレイヤーが長官となって部下に命令を出す形でゲームは進行するが、命令を受ける部下の顔グラフィックを表示してキャラクタ性を出していた。ユニットではなくインタフェース的な役割ではあるが、顔グラフィックを表示して会話によって進行するシミュレーションゲームのかなり初期の作品。なお、同時期に「スターフリート/B」が発売されている。日本では、スタートレックゲームは、キャラゲー方向へのアレンジと、3D表示方向へのアレンジがなされていたと言えるかもしれない。
ウルティマIII(オリジン,1983)
ウルティマシリーズでは、3作目から戦闘にタクティカル風のシステムが採用されている。RPGがシミュレーション的な戦闘を取り入れた初期の作品(世界初ではないようです)。移動中はそれまでのRPGと変わらない形態だが、敵と遭遇すると戦闘専用のフィールドが表示され、味方と敵を交互に動かして戦うことになる。同様のタクティカルな戦闘は、その後様々な要素が追加されながら、「ファンタジアン」(1985.2)、「ジェネシス」(1987/PC98版は1985)、「ミネルバトンサーガ」(1987.10)、「ティルナノーグ」(1988.1)、「エメラルドドラゴン」(1989.12)などへと発展していく。
アーコン(Archon,Free Fall Associates,1983)
チェスのようなゲームだが、駒がファンタジー風の個性的な生き物になっていて、アクションゲームで勝敗を決めるシステムを採用している。光と闇の勢力に分かれて闘う。盤面に一方の勢力が有利になるマスがあったり、敵の全滅か拠点となるマスの取得が勝利条件になっていたり、リーダーが強力な魔法を使うことができたりするなど、シミュレーションゲーム的な側面がある。BPSによって「アーコン」(1986.6)の名前で国産PCにも移植されている。2010年には海外でリメイク版がArchon classicという名前で発売されている。

1984~1986年

ボコスカウォーズ(アスキー,1984.6)
複数のキャラクタを率いて敵を倒す独特なシステムのゲーム。基本的には王様を動かすと同じ方向へ多数の兵士が動くようになっていて、途中に囚われた兵士を救いながら大群となって進んでいく。王だけを動かしたり兵士だけを動かしたりすることもでき、障害物をうまく使うと隊列の操作もできるようになっている。個々のキャラクタは敵と接触すると戦闘になり、何度か勝つとクラスチェンジするシステムも採用されている。
上海(スタークラフト,1985.6)
前述の「アリババ」を移植したスタークラフトが、アリババと同じシステムを採用して作ったオリジナルの国産PCゲーム。アリババと同様に、移動システムがタクティカル風になっている。続編に「九龍島」「闘気王」があり、ジェイミースター三部作と呼ばれている。海外のシステムをもとに国産ゲームを作った初期の事例のひとつでもある。
ディーヴァ(T&E,1986.12)
機種ごとに別々の主人公のストーリーが展開するSFシミュレーションゲーム。 対応機種はPC88,FM77AV,X1,MSX,MSX2,ファミコン,pc98の7種類。 機種間でデータを移動することができ、例えばパスワードを使ってパソコンで育てた データをファミコンへ持っていくことなどができた。 ある機種のゲーム内で別の機種の主人公が登場するなど、一部にストーリー上の関連性があった。 シミュレーション部分は陣取りゲームで、戦闘はサイドビューのアクションになっている。

1987~1988年

エルスリード(NCS,1987.3)
ファンタジー世界を舞台としたシミュレーションゲーム。ロードオーバーを発展させた感じで、戦闘はタクティカルなシステムになっている。続編に、ガイアの紋章(1987.6)や、SF要素を取り入れたガイフレーム(1987.12)がある。NCSはその後、メサイヤというブランド名でPCエンジン用に「飛装騎兵カイザード」(1990.1)を発売している。これはSFシミュレーションゲームで、キャラクタやロボットにドラマをもたせている。戦闘時には派手なロボットアニメーションが表示されるなど、スーパーロボット大戦にとても似た雰囲気のゲームになっている。
ファンタジーナイト(システムソフト,1987.11)/マスターオブモンスターズ(1988.10)
大戦略のシステムをベースに、世界観をファンタジーにしたゲーム。マスターオブモンスターズでは、ユニットの成長や、マップをつなげたキャンペーン的なストーリー表現などを採用していた。
ティルナノーグ(システムソフト,1988.1)
シナリオ自動生成が話題となったRPG。戦闘シーンはRTSのような、必要に応じて指示を出すオートタクティカル方式を採用していて、ユニットに相当する味方や敵に性格が設定されていて動きで個性を表現していた。また、仲間が勝手にパーティから抜けたりするなど、戦闘以外にも人間味を感じさせる様々な手法が取り入れられていた。
シルバーゴースト(呉ソフトウエア工房,1988.4)/ファーストクィーン(1988)
ゴチャキャラシステムとして有名なリアルタイム多人数バトルを採用したアクションRPG風のシミュレーションゲーム。各ユニットにはキャラクター性があり、固有の名前がついていて、イベントによって味方に加わる主役級の個性的なユニットも多数登場する。個々のユニットの成長、クラスチェンジ、アイテムの所有、死んだら復活できない、など、その後のSRPGでよく見る様々な仕組みが多数採用されている。ゲーム全体もストーリー性をもたせたRPG的なつくりになっていて、対立する勢力の一方を味方につけると一方が敵になったり、敵や味方が寝返ったりするなど、各場面にドラマ性も持たせていた。一方、全体マップでは時間の経過とともに敵軍が攻めてきて、それを防ぐように味方を配置する陣取り型シミュレーションゲームの要素も取り入れている。それでいて、複雑な操作はほとんど必要なく、アクションRPGを操作する感覚でプレイすることが可能だった。「ファーストクィーン」がシリーズ化されただけでなく、シミュレーションに特化した「デュエル」(1990)や、RPGに特化した「川中島異聞録」(1992)なども発売されている。なお、RPGの戦闘にタクティカルなシステムを採用したもの(ティルナノーグなど)と異なる点としては、探索も集団行動になっていて戦闘へシームレスに移行する点や、同時に登場するキャラクタ数が圧倒的に多い点などがあげられる。
ヘルツォーク(テクノソフト,1988.5)
自動的に動く兵器を多数出現させて戦うRTS的な要素のあるアクションゲーム。プレイヤーが操る兵器は高速な移動、兵器の運搬、敵への攻撃ができる。マップは縦方向に長い通路のようになっている。海外のサイトを見ると、RTSの元祖的なゲームとして、このゲームの続編である「ヘルツォーク・ツヴァイ」が紹介されることがある。
維新の嵐(光栄,1988.6?)
リコエイションゲームの第1弾。シミュレーションゲームとRPGの融合をうたって開発されたシリーズ。他に「大航海時代」(1990.5)「伊忍道 打倒信長」(1991.7)などがある。
シュバルツシルト(工画堂,1988.12)
星間戦争を描いたSFシミュレーションゲーム。プレイヤーが自由に遊んでいる中で自然にイベントが発生し、まるでひとつのストーリーを体験しているかのように感じることができる。シナリオシミュレーションゲームと銘打っていた。マップは同社のRPG「覇邪の封印」のフィールドの表示を発展させたようなシステムになっている。

ここでは1982年から1988年までに発売された特徴的なパソコンゲームについて紹介しました。同時期のファミコンゲームには、SDガンダムワールドガチャポン戦士スクランブルウォーズ(バンダイ,1987.11)、ファミコンウォーズ(任天堂,1988.8)、半熟英雄(スクエア,1988.12)ファイアーエムブレム(任天堂,1990.4)などがあります。 パソコンゲームの分野では、既存の様々なタイプのゲームの要素を組み合わせ、RPG的な要素やストーリー性、キャラクター性、などを取り入れ、独自に発展させる試みが多数なされていたことがわかると思います。

SRPGの歴史やその他の特徴的なシミュレーションゲームについて語る際の参考にしていただければと思います。


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2018/8/9 シミュレーションゲームとロールプレイングゲームの融合にかかわりそうなゲームについてまとめたものを作成、公開。